多摩川の河原を散策した。

　あいにくの雨で傘を持ちながらとなったが、晴れていたら人が出ていただろう川岸の公園には人っ子一人見られず、小鳥のさえずりと傘をうつ雨音、そして時々、遠くの鉄橋を渡る電車の音だけが聞こえてくる、静かな風景が広がっていた。
　雨にぬれた草や土の匂いとともに、時折吹く強い風に傘を取られながらも、小さな花や飛び回る小鳥に目を奪われていた。
　しかし、ふと、土手の下を見ると、その昔、洪水で流れ着いたであろう流木が累々と積み重なっていて、自然の猛威を感じずにはいられなかった。

　河原から５分歩くとそこは、にぎやかな駅前の商店街。
　自然を克服してきた人間は、それでも、まだ、自然の一角にそっと住まわせてもらっているだけで、壮大な大地に見守られながら暮らしているんだと実感した。