薄暗い納屋の中で、片付け物をしていたある日の午後。
一緒に仕事をしていた娘が突然私を呼んだ。
「ねえねえ、お父さん。ちょっと見て」
私は仕事の手を休め、娘のもとへ歩み寄った。
うずくまっている娘の視線の先を覗いてみると、
それは古ぼけた白黒写真のつまったアルバムだった。
「ほら、これ」
娘が指差す写真には、山高帽をかぶり姿勢を正している
一人の男が写っていた。
それはまぎれもなく、私の死んだ祖父の姿だった。
「ね、似てるでしょ」
娘はそう言って、くるりと私のほうに振り返った。
一瞬、私は何のことか良くわからなかったが、
再び写真を眺めてすぐに気がついた。
写真に写っている祖父は、ちょうど今の私と同じ歳ぐらいで、
まるで私がタイムスリップでもして写真に入り込んだかのように、
私とそっくりの顔をこちらに向けているのだった。