電車はもう走っていない

人のぬくもりが途絶えた夜更けの街で
遠ざかるバイクのむせ返るような排気音が
コンクリートのビルの隙間に溶け込んで消える

蛍光灯の切れかかった古い街灯は
まるで眠気に誘われたかのように
うなだれてうつらうつらと舟をこいでいる
動きのない風景の中でそこだけが
街の鼓動を感じさせる

鉛色した空気が夜の底に沈んでいる