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（前回までのあらすじ）
　退屈な大学生活を送っていた健一は、ひょんなことから街角で見かけた末子に一目惚れした。そんなある日、末子は目が見えないということを友人に聞かされてしまう。しかし、それでも自分の気持ちが変わらないことを確認した健一は、末子が前から行きたがっていたプラネタリウムに連れて行くことにした。が、末子の思い出のプラネタリウムはすでに取り壊されていた。今日は定休日だったと言って、満天の星を見ることのできる郊外の山の上へ末子を誘う健一であったが、あいにくの曇り空だった。末子を残念がらせたくないと思った健一は、美しい星空だよ、と嘘をつくのであった。

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　その夜、健一の車で家まで送ってもらった。車が家の前に着くと、末子の母親がほっとしたような顔をして飛び出してきた。
「おかえりなさい。健一さん、今日は本当にありがとうございました。何かと末子がご迷惑をかけたでしょう」
　末子の母親がそう言うと、
「いえいえ、とても楽しかったですよ。いつも家の中で閉じこもっていてはいけません。また、次の機会にもぜひ私をお供させてくださいね。末子さん」
と、健一は末子に向かって微笑んだ。
　末子もそれを聞いて、ぎこちなくだが笑顔を見せた。
　それじゃあ、と言って健一は夜の街へと消えていった。

　末子の家の茶の間。
「どうだったの。うまくいった？」
　母親が末子にたずねる。
「うん、まあ、初めだからこんなもんかなと。でも、大丈夫。次にはうまくやるから」
「そう？ それならいいんだけど。今度の人も優しすぎるところがあるから、お母さんはちょっと心配なのよね」
「ふっふっふ、そんなこと、これっぽっちも思っていないくせに」
と言うと末子は、手に持ったピーナッツをひょいっと投げ上げて、落ちてくるそれを見事に口の中に入れた。
「あら、ばれた？ でも、心配なのは本当よ。末子の嘘がいつ相手の人にわかってしまうかってね」
「そんなことにはならないから安心して。もう、５年、いろんな人を相手にして、誰一人気づいた人はいないんだから」
「そうよねえ。末子のおかげだわ」
「お母さんもなかなかの役者よ。ふふふ」
「あら、言ったわねー」
　女二人の屋根の下。妖しい笑いが今宵も響くのであった。