駆け出しの頃の清水義範と謎めく宇宙の物語
　この本は、１９７９年１月に朝日ソノラマからの４冊目として刊行されたものを、角川春樹事務所から再刊したものである。
　当時はインベーダーゲームが流行のきざしをみせていた頃で、江川卓が「空白の一日」を利用して巨人に入団したのも前年の末のことだった。
　清水義範は、名古屋の大学を卒業してから単身東京にやってきて７年目にあたる。東京・青山のファッション情報会社で働き続けてはいるものの、仕事から帰った夜や日曜日には、タレント本のゴーストライターとかソノラマ文庫のＳＦ作品をせっせと書きためていた、いわば、作家の修行時代であった。
　この「禁断星域の伝説」から始まる全５作の宇宙史シリーズでは、修行時代とはいえ、将来の清水義範の活躍が見透かせるような原石の輝きが感じられる。清水流の人に対する優しいまなざしにあふれているのだ。
　この話の内容は、「テクス」と「ホモス」という２つの人種の対立がメインテーマであり、優位人種と呼ばれる「テクス」に対抗して、支配される側の「ホモス」の自由獲得への闘いが描かれている。しかし、なぜこのような２つの人種によって宇宙が支配されているかということが大きな謎であって、その鍵となるのが「禁断の星域」なのである。主人公タケルは、伝説によって航行を禁じられている星域へと旅立ち、その宇宙の謎をひもとくことになる。
　シリーズ２作目の「黄金惑星の伝説」以降へ読み進めていくと、宇宙を舞台にした勇気と冒険の物語を楽しめるとともに、全体を通して提示される壮大なミステリーを体感できるかもしれない。

【関連書籍】
　黄金惑星の伝説
　不死人類の伝説
　絶滅星群の伝説
　楽園宇宙の伝説